あとがき、のようなもの

この小説を書いたのが2006年だから、今から3年前になる。当時、病気のリハビリ中で、「小説でも書いてみっか」と思いつき、恐れ多くもプロの作家である師匠に「どうですかねえ」と聞いてみた。「とりあえず書いて、どっかの新人賞にでも応募してみれば?」といわれ、大体1ヶ月で書き上げた。読んでみて自分でも「こりゃ、駄目だ」とは思ったのだけど、まあ処女作ではあるし、師匠への元気の証としてここに公開している(インターネットがあるから自費出版なんて金のかかることしなくていいわけだし)。

基本的にこの話は実話である。ただはっきり「実話」って書いちゃうといろいろ差しさわりもあることだし、人の恨みを買うのは本意ではないので架空戦記ってことにしてある。それに師匠が架空戦記を書いてるので自分もそのジャンルをひとつ書いてみようか、と思ったわけで。師匠は「架空戦記ってのはもうガチガチにフォーマットが決まっているジャンル」っていってたので、架空戦記を名乗ってはいるが実際には架空戦記ではなかろう。それに俺の場合、フィクションよりノンフィクションの方が好きである。事実は小説より奇なり、って言葉があるけど、たかが1人の人間が頭の中で考えたことより、現実の方が数倍面白いしスリリングである。そのためには日頃から「取材」が欠かせないわけで、この小説もまあそういったフィールドワークの中から生まれたものである。

「無料でゲームの作り方教えます」、当時勢いのあったゲーム会社のアルファシステムが面白いことはじめたな、ってのが第一印象だった。まあそれが本当に実のあるものであるならば、どんなにいいかな、とも思っていた。とりあえずネタ元としてはうってつけだったし、そのときは時間はいっぱいあったのでちょっと首を突っ込んでみる気になった。ただ、最初から「なんかうさんくせー」と思っていたのも事実。っていうのも「成績優秀者は、ゲーム会社(他社)への就職斡旋を行います」といっていたからだ。悪いけど世の中、そんなうまい話はない。だって後に当の芝村氏本人でさえ「アルファをやめようと思ってから十分後に他の会社からお誘いの電話があった」ってどこかに書いてあったけど、自分の就職さえままならないのに、他人を他社に送り込むなんてことができるわけがない。だから「なんでこんなことをはじめたんだろ」ってのがこの取材のテーマであった。まあ、それには正直いって答えが出てない。ただもしかしてそうかなと思うのは、単に「俺、TSUEEEEEEE!」を現実世界でやってみたかったのかな、ということだ。ガンパレードマーチのヒットで、会社も芝村氏も勢いがあったので、それぐらいできる、と妄想しちゃったのかもしれない。まあ「ゲームの作り方教えます」といっているものの、ノウハウらしきものはほとんど教えてないし、やる気のなさはみえみえなんだけどね。

ただ困ったのは「嘘を教える」ことだ。オーバーフローが発生するようなプログラム書いて自慢したり、「プログラマは0と無を区別する必要がある」なんて、正直言ってなにそれ?な話なんだけど、もしかしたらそれを信じ込んでしまう、ウブな小中高校生もいるかもしれない。まあ今なら2chあたりでヲチして笑い者にしてればいいんだけど、当時は2chもWikipediaもまだ大きくなかったし、「本職のゲームデザイナーが言うことだから」でそのまま通ってしまう可能性があった。だから最初は本当に「仕方ないから」「自分の良心と価値観が許さないから」反論していたに過ぎない。まあ、数学とかだとちゃんと調べりゃどっちがより正確なこといってるかわかるんだけど、歴史あたりでは少々遊ばせてもらった。っていうか、歴史討論のあたりは「全部ネタ」だ。歴史ってのは結構面白いジャンルなんだけど、それも自分がちゃんと調べるって行為が必要なわけで、「日露戦争において旅順自体が想定外」とかいっても、その意味が分かる人じゃないと、仕込んだネタの面白さもわからないだろう。まあ、本音をいえば「おまえら、ゲームデザイナーになりたいなら、これぐらいは常識として知っておけ」といいたかったんだけどね。あと、課題が無茶苦茶なのにも参った。「どうすれば意識を得られると思いますか」って、そんなのが説明できるんだったら、人工知能なんてとっくにできてるって。まあ「AIの芝村」としては知りたかったんだろうけど、悪いけど教えてあげない(苦笑)。それとか「独裁官」だの「カレル2」だの「改良不可能理論」だの、ネタもいいけどもうちょっと一般的(出題者の脳内以外)な問題を出して欲しかったな。無茶苦茶なのも教育のうち、とかいいそうだけど、他人の貴重な時間を使わせといて得るものがなにもないなら、そんなものは教育とは呼べない。そういうことは仲間内だけでやって欲しいね。

多分GAME-DOJOの企画発案者は佐々木社長か芝村氏だったんだろうけど、内容みてチェックする人間がアルファにいなかったのは会社としての怠慢、というか佐々木社長の責任。「会社ってのは社会の公器である」ってのが分かってないのはどうしてなのかしらん。一応ハッキリ指摘しておいたけど、逆ギレする始末だし(もしかして本当に意味がわかってなかったのかね。そしたらそれはそれでまた別の問題なのだけど)。発言では「社長は会社で起こったことのすべての責任を取る必要がある」なんてカッコイイこといってたけど、その後のアルファ掲示板炎上騒ぎで、公式なコメントとか陳謝とか一切なしで掲示板消しちゃって「ないんだからもういいだろ」的な対応してたのは、非常にお粗末。(悪い意味で)田舎の会社だから仕方ないのかねえ。まあ、掲示板と一緒に中学生向けの毒文がなくなったのはいいこと。

だから途中から俺の独演会の場にさせてもらった。アルファが何も教える気ないんなら場所がもったいないでしょ。だってインターネットで書いてることを真剣に読んでくれる人がいる場なんかめったにないぜ。ネタは有り余るほどあったから、たまにはいいかなと思って。一応、表面上は企画の方法、ちょっと分かる人には詐欺の手口とその対処、よーく分かってる人にはマインドコントロールの実際、というネタ構成になってる。まあどこまで伝えられたかは分かんないけど、面白い人はそれなりに面白かったんじゃないかな。そういうのが「実地教育」ってやつだし(自分でも「ちょっと悪質かな」とは思ったけど)。それに後半部分は、本当に病気が発症した時のログで、今読み返すと自分でも辛いのだけれど、まあこれも事実だから仕方がない。正気と狂気のぎりぎりを、本当に記録できたのは、書き手としてはラッキーだったといえる。まあ人様に芸をお見せするときは自分の身を削ってなんぼだから、ちょっとは変わった芸を見せられてよかったかも。

まあ、そんなこんなもあったわけだが、やっぱあれはライブで見物してないと面白さが伝わらない。まあ、過去ログのデータベース見ればどんな(無茶苦茶な)事が起こったのかわかるんだけど、みんな忙しそうだしね。とりあえずダイジェストの紹介ってことの意味も小説にあるんで、興味のある人はデータベース落として楽しんでください(そのうち時間ができれば閲覧ツール作ります、ってずーと言ってるな)。

ってとこかな。