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水泳大会

 竹田津は中学3年生になった。身長は175cmを超えた。水泳部ではバタフライを専門種目にしたので、肩から胸にかけての筋肉の発達が著しい。胸囲は1mを超える。雄牛のような肉体、まるで大藪春彦の小説に出てくる主人公のようである。

 今年も校内水泳大会の時期がやってきた。竹田津の中学では一般生徒に混じって水泳部の選手も泳ぐ。あまりに格が違い過ぎるので一般の生徒から抗議がでたが、大会委員長のにっさんは一顧だにしない。「だってお前、球技大会にはバレー部もサッカー部もでるじゃろが」というのが表向きの理由。本当の理由は毎日地味に練習を続けている水泳部員へのささやかなご褒美なのだ。竹田津の水泳部は中学なのに1日最低5000mから6000mは泳ぐ。スパルタもいいところで、練習量においては他校を圧倒している。実際、県大会ぐらいまでは余裕である。だから校内水泳大会なんてはっきりいって子供だましだ。

 校内水泳大会では野球部のエースもバスケット部のキャプテンも、水泳部の敵ではない。部員の方も勝手知ったるもので、お互い種目が重ならないよう、うまく相談しておく。竹田津の専門はバタフライなのだが校内大会では種目が作れないので100m個人メドレーに回った。スタート、そしてゴール。2位に25m以上差をつけての圧勝である。観客席の女子から黄色い声があがる。
 濡れた身体のままクラスの席に帰ると、同じクラスの女子から何本もタオルがでている。竹田津は近眼なので一番近くのタオルを手にとった。よく見るとタオルを渡してくれたのは直子である。目が笑っている。
「すごかったわね」
「あほう、こっちは本職じゃ。お遊びみたいなもんよ」
竹田津も笑い返した。

 このあと、ちょっとした事件があった。竹田津は下級生の女子の小西から放課後に呼び出された。小西というのは学年一の美少女で、その小西が「ぜひ付き合って欲しい」というのだ。竹田津は考えることなく「つき合えん」と答えた。小西は告白されても告白するタイプじゃないし、ふってもふられるタイプじゃない。その返事が意外だったらしく、「どうしてですか」と重ねて聞いた。竹田津は正直に「俺には好きな娘がおるけん」と答えた。女の方から告白するのは勇気がいることだ。竹田津もそれに正直に応えたに過ぎない。

 こうして竹田津の中学生活は過ぎていった。直子との間は単なる同級生という間柄。しかし竹田津はその関係に十分満足していた。

 そして話は高校に移る。

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作成:2009-7-11 7:29:04   更新:2011-1-19 5:11:10
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